My Precious ~愛する人よ~ Ⅰ



「1年前の戦いで、確かにガスパルを抑え込む事ができました――しかし、その残党がまだこの国のどこかで息を潜めているのです」



その瞳を歪めて、ギュッと拳を握りしめる彼女


その言葉を聞いて、さっきまで見てきたアネモスの国を思い浮かべる

隠れるには、格好の場所

それは――




「――森の中」

「…そう。この国の森は深い。負けたと分かっても尚、森に身を隠し、突発的に街を襲い食べ物を奪っているのです」



グレイスの言葉に、さっき訪れた街を思い出す



せせらぎの側の、美しい石畳の街

市場に並ぶ、色とりどりの食物

歌う様に聞こえる笑い声



そんな中にも――



どこか脅えた様に、辺りを見渡す民

その美しい姿の中に、どこか恐怖が満ちている