「感じましたか?」
「――水の音が」
「そう。耳を木に付けなくても聞こえるのです。木の声が」
驚く俺を見てから、嬉しそうに微笑んで木から離れたグレイス
そして、少し離れた場所にある岩の上に優雅に腰かけた
「私の一族。ウィスタリア家は、この国の木々を守る事を任されているのです」
そう言って、遠くに広がる広大な森を見つめるグレイス
その視線の先に目を向けながら、グレイスの隣に立った
「ウィスタリア家は遥か昔から、木々の守護を任されてきました。それは我ら一族だけが、唯一木々に『気』を送る事が出来るからです」
「――気?」
「命の源です」
「――」
「枯れた木を甦らせ。芽吹いた木の成長を助けるのです」
風になびく美しい髪を押さえながら、試案する俺の顔を見てクスッと小さく笑ったグレイス
気を送る?
木々の成長を助ける?
一体どういう事だ――?



