My Precious ~愛する人よ~ Ⅰ



「クレムは滅びた」




どこからともなく聞こえた声

透き通った、その声に背筋が伸びる



ゆっくりと後ろを振り返ると

銀色の美しい髪を風になびかせて、こちらを見つめて立つホリスがいた



いつの間に――



そう思ったけど、さっき聞いた言葉が頭を占領する




「滅びた...?」

「あぁ、さきほど知らせが入った――ガスパルだ」




俺の目を見ずに、そう言って

コツコツとこちらに向かってくるホリス

そして、吐き捨てる様にその国の名前を言った




「国王は・・・」

「王家も皆、殺された」




揺れる俺の言葉とは逆に、淡々とそう言うホリス



まるで、世界を一歩後ろから見ている様な

そんな印象