My Precious ~愛する人よ~ Ⅰ



「もともと俺達はある任務の為に、旅をしていた」

「任務?」



訝しげに、そう言って首を傾げるグレイス

真っ赤な夕日が彼女を照らし、赤く染める



どうして今まで忘れていたんだ



あの日王宮で手渡された書簡を思い出す

必ず届けて欲しいと、陛下から直接手渡されたモノ

国一つの運命を変えるかもしれない、書簡―――




「訳あって、クレムまで行きたい」

「クレム...」




俺の言葉を聞いて、小さくその国の名前をなぞるグレイス

その言葉はどこか揺れていて、頼りない




「グレイス?」




その声を不思議に思って、目の前の彼女の顔を覗きこむ

すると