My Precious ~愛する人よ~ Ⅰ



「なっ何事です!?」

「グレイス! 頼みがある!」



勢い良くグレイスに向き直って、その細い肩を掴む

驚いたグレイスは、一歩後ろに引いた



「俺をこの国から出してくれないか?」



それでも、間髪入れずに言葉を落とす

すると、その言葉を理解したグレイスが瞳を揺らした




「な...何を仰っているのです!? ご自分の立場をご理解しておりますか?」

「分かっている! それでも、行かなければ!」

「行かなければとは...どこへ?」




理解不能だと言わんばかりに、眉間に皺を寄せて俺を見つめるグレイス

その姿をじっと見つめ返して、必死さを伝える



分かっている

俺は言わば、捕虜の様なものだ



招かざる客。

勝手な行動は制限されている



でも――