が、触れる程度で、すぐに唇は離れた。
唇が触れた瞬間、我に返ったのだ。
先生に、キス、してしまった・・・!
なに、やってるんだ私は・・・・。
物音を立てないように、後ずさる。
こんなことがバレたら・・・私・・・
「・・・・ん?誰?」
起きた・・・・!
ま、まずい!
どうしよう・・・・。
先生は目を擦りながら体を起こし、眉間にシワを寄せてこちらをじっと見つめている。
ああ、そっか・・・眼鏡・・・・
まだ私の手の上に、先生の、眼鏡が・・・。
「あ、あの・・・」
「ん・・・?山本・・・?」
こんなときに限って、声を出してしまうなんて、なんというタイミングの悪い声帯だ。
慌てて口を塞ぐも、時既に遅し・・・
先生は一歩ずつ、私に近付いてくる。
どうしよう・・・・
「俺の眼鏡、返して」
先生も、参考書の上の眼鏡がないことに気付き、私が犯人だと見破られてしまった。
これはさすがの先生でも、怒りそうだ。
いや、普通、寝てる間にキスなんてされたら、怒るどころじゃ済まない。
でも、先生が一歩、私に近付く度に、私の足も一歩、後ずさりしてしまう。
早く眼鏡を返さなきゃと思うのに、先生がいつもとはまた違う真剣な顔をして私に迫るから・・・・
「わっ・・・!」
足元まで気を配る余裕がなく、床に置いてあったゴミ箱につまづいてしまった。
よろける足でなんとか体勢を整えようとするも、立ち直ることができず、お尻から、床に転倒。
「いたたっ・・・・」
私の声とゴミ箱がひっくり返る音に反応した先生も、何事かとぼやける視界で私の元に更に近付いてくる。
私は、ぶつけたお尻が痛すぎて立ち上がることができず、座ったままで後退りを続けた。
トンッ
足の代わりに動かしていた腕が、背後で何かに当たる。
振り向くとそこには壁があって、それはもう私に逃げ場がないということを表していた。

