思わず声を出してしまった。


男子生徒は反応してこちらを見た。


「ああ、昨日の」


俺の姿を見て、ふっと男子生徒は笑む。



「どーも。」


…というか、年下だったんか。


「ほら、今話してた…」


こそっと楠木へ耳打ち。
何故か顔は険しい。



「探してた人は見つかった?」
「え、ああ、コイツ」


と、横にいた楠木を指す。



「探してたのってこの人?」
「うん、そうだけ――うわっ」



楠木が急に俺の腕を引いて歩き始めた。



「ちょ、急になに?」
「あの人……気に入りません。」
「は?」
「なので近づかないでください。」



そんな無茶苦茶な…。



「楠木、意味わかんないから。」
「分かんなくていいんです。兎に角、あの人には近づかないでください。」



楠木は北校舎に入り、ようやく足を止めた。



「ちゃんと俺が守りますから。」


ふっと身体が軽くなる。


どうやら楠木が祓ってくれたようだ。



「そんな先輩のおかしな体質は、俺が知っていれば充分でしょう?」
「……まぁ。」



それにしてもアイツは何者だったんだろう。


ま、いいか。そんな事はどうだって。