俺と後輩と怪談と。



放課後になると後輩が教室まで俺を迎えに来た。


「行きましょうか。」


どこへ?とは訊かなくても分かる。


足は自然と北校舎へ。



「で、お前は一体どこに行ってたんだ?」
「ははは、そんな怖い顔しないでください。ちゃんと話しますから。」



隣を歩く後輩は肩を竦めた。



「正直言うと俺自身もどこにいたのか分からないんです。」
「は?」
「なんと言いますか……ただ暗い空間に居たとしか分かりませんでした。」
「じゃあどうやって戻ってきた?」



首を傾げると、楠木も同じく首を傾げた。


「言いませんでしたっけ?」
「なにを?」
「壁男に連れ去られた者は数日経つと戻ってくるんですよ。」
「………は?」



後輩曰わく、

壁男に連れ去られた者は、数日後元の場所に戻ってくるらしい。

ただ何処にいたのかと尋ねても返答は“暗闇”。

何処へ連れ去られるのか、その行方は全くの不明。



「……聞いてない。」
「そうでしたっけ?」
「……俺がどれだけ心配したか」


横目で睨めば後輩は嬉しそうに笑った。


「心配、してくれたんですか?」
「…当たり前だ。大体にして、お前が危険だとか言うから。」
「危険ですよ。だから今回は俺で良かったと思ってます。」