「何やってんの?こんな所で。」
近づいてきたソイツは頭一つ分、俺より身長が高かった。
同じ制服を着ているんだから、この学校の生徒に間違いない。
「人を探してて」
「人?こんな所で?」
頷けば、何やら考えるように口元に手を寄せた。
「じゃあ探すの手伝ってあげようか?」
「有り難いけど……たぶん、無駄。」
「なんで?」
ここで本当の事を言っても笑われて終わりだろう、と思った。
まぁ、その方が手っ取り早いか。
「壁男に連れ去られてしまったみたいだから。」
「へぇ。壁男ねぇ。」
予想が外れてしまった。
目の前の男は、笑いもせず、馬鹿にもせず、真剣に俺の言葉を聞いた。
「あの……笑わないの?」
「なんで?」
なんでって………
普通笑うだろ。
それとも、あれか。
七不思議信じちゃう系男子か。
「その友達なら大丈夫だと思うよ。」
「え………」
「明日にでも、ひょっこり戻ってくるよ。きっとね。」
男子生徒は笑って断言した。
「それってどういう意……」
「じゃあ」
俺の言い掛けた言葉を無視して、男子生徒は踵を返し去っていく。
ひらひらと片手を振る背中を俺は無言で見送った。
壁男の話もあっさり信じ、
挙げ句、明日には後輩が帰ってくると断言した。
一体何者なんだ………?
………考えても仕方ないか。
明日帰ってくると言うんだ。
大人しく待ってみよう。
「帰るか。」
もう一度壁を見つめてから、俺は帰路についた。


