先輩の顔が一瞬のうちに真っ赤に染まる。
そして照れ臭そうに、前髪を掻き上げた。
「緊張どころか、意識飛ぶかと思った」
緊張通り越して意識まで⁉
そこまでする気はなかったのに……もう当分私からキスするの止めとこう。
試合前に選手が気絶しちゃったとか、洒落にならないし……。
「そろそろ行かねぇとヤバいな」
先輩に手を引かれながら、試合会場まで走り続けた。
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試合開始のサイレンが鳴り響く。
先行は私達。ベンチからも、応援席からも声援が飛ぶ。
相手校のピッチャーは、この辺でも一二を争う程の腕前だ。
彼の持つ高速ストレートは、どんな凄腕のバッターでも押されてしまう。
内角を攻められれば、誰だって腰が引いてしまうだろう。
だけど、このチームはピッチャーと鬼才の打率を誇る4番の選手がやたら強いだけで、他は私達とそう変わらない。
つまり、たった二人を攻略して崩せば、私達にも勝利が見えてくるってことだ!
「矢野ーー塁に出ろーーー‼‼‼」
あ……矢野先輩ってば、肩に力が入ってる。
緊張でガチガチじゃん……ちょっと、いやかなり……ヤバい、かも……?


