唯一の涙


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それから私達は第二試合、第三試合を順調に勝ち進み、準々決勝まで辿り着いた。
今回の相手校は、去年の甲子園出場校だ。



いつにない緊張感が、私達を容赦無く追い詰めて行く。



「なんてゆーか。いやぁー今日もええ天気やね〜、石神くん」



「その台詞、曇ってる時に言うのがセオリーらしいよ」



「……。俺、日焼けしたらどないしょ〜。誰か日焼け止め塗ったって〜」



「日焼けしない体質だって言ってたの誰だっけ?」



「………」



「………イケズ」



今日ばかりは、白石先輩と石神先輩の漫才も、キレが悪かった。
二人とも、表情が硬い……。



余裕がないって感じだ。
これが試合にまで影響しなきゃ良いけど……。



一抹の不安を胸に抱えたまま、私達のバスは会場に到着した。



「選手は荷物を預けたら直ぐストレッチ。俺が行くまでにキャッチボールまで済ませろよ」



「「「はいっ」」」



みんなが降りたのを確認して、私と水野先輩はどちらともなくお互いを抱きしめる。



此処で、初めてのキスを水野先輩としたあの日から、ずっと続いていること。
それは、誰もいなくなったバスの中でキスを交わすこと。



「河原………」



「んっ」



あ……れ……。



今日、何だかいつもより長い……?



ん……ヤバい。
息が、苦しい。



でも、ちょっと先輩……



「……ごめん。苦しかったよな」



震えてた?