唯一の涙


「私、あれから真面に先輩の顔見れなくて……。キスが嫌だったわけじゃないんです。ただ照れ臭くて、先輩の前でどんな顔をすれば良いのか分からなくてっ……それで……っ‼」



馬鹿、私。
なんか日本語メチャクチャじゃん。



「そんな悲しい顔で笑わないで下さい……好きです、先輩が好きなんです…っ。キスだって本当は嬉しくて……」



握り締めた手が震える。
何これ……心の中に閉じ込めていた気持ちが一気に溢れ出して止まらない。



「いつもの先輩の笑顔を……見せて…」



先輩、振り向いてよ。
背中なんて見せないで。



「水野先輩‼」


誰よりも、先輩のことが好きなんだから‼



「………ひゃっ!?」



バスの中で感じた違和感がまた、私を襲った。
手を引かれた先に待っていたのは、先輩の唇。



カチッと音を立てて、唇が重なった。



「……歯が当たるとか、ダセェ……」



キャップのつばが後ろに回されて、先輩の赤い顔が眼に映った。



「お前って大告白する奴だったんだな」



「引きましたか?……私の事」



先輩は自分と私の額を合わせると、笑顔で囁いた。



「俄然好きになった」



そして、三回目のキスを私に落とした。