唯一の涙


治まっていたはずの涙が。また胸の奥から溢れ出す。



大好きな先輩の顔も、涙に遮られる。



泣きたくない。泣きたくないのに、この涙を止める術をわたしは知らない。



でも、不思議だ。



人に涙を見せることが、他の何よりも耐え難い屈辱だと思っていた幼い頃の自分。



いや。今もそう思ってる。



涙を見られて、無防備な自分の姿を好きな人に晒すことは。穴に入りたいほど恥ずかしい。



でも、それでも。



後から後から、取り留めもなく溢れて来る雫たちが、あたたかくて。



言葉に出来ないほどの、幸せを感じてしまうんだ。



ねぇ、先輩??



どうか笑わないで下さい。



あなたの言葉一つで、一喜一憂してしまうわたしを。



あなたの行動一つで、心を動かしてしまうわたしを。



笑わないで受け止めて下さい。