唯一の涙


私は、ナポリタン。先輩は、ペペロンチーノを頼んだ。



「ここ、なんか良い感じのお店ですよね。好きだなぁ、こういう趣味」



シンプルだけど、オシャレな雰囲気が良い感じ。


「俺も」



先輩がそう言った所で、料理が運ばれて来た。



「お待たせしました。ごゆっくりどうぞ」



店員のお姉さんが、何か意味あり気に笑った。
ちゃんと私を見て笑ったから、気の所為とかじゃないよね。



「美味そうだな、河原‼……河原?」



「あ、すみません。……わぁっ美味しそう‼早速食べましょ」



「ははっ……なんだよ、変な奴」



なんだったんだろう。
嫌な人じゃないんだろうけど、気になるな。



ナポリタンは文句無しに美味しかった。
先輩に一口もらったペペロンチーノも家で作るより何倍も美味しかったし。



また来たいな。



「河原、悪いんだけどちょっと待っててくれるか?寄る所あったの忘れてた」



「あ、良いですよ。気を付けて下さいね」



先輩は私の頭を優しく撫でると、カフェを出て行った。



一人になっちゃったなと思いつつ、窓の外に目を向けると、夕焼けに照らされた海面が見えた。
茜色の夕陽。



息をするのも忘れるぐらい、綺麗だった。