唯一の涙


「和歌さん、今日泊まるんでしょ?」


みんなで寛いでいると、奏ちゃんが私に訊ねた。
私は曖昧に頷いて見せる。


「……ん……どうかな」


「えぇぇぇ、泊まってよ和歌ねーちゃん!!」


空くん、痛いよ。
膝の上でカエルみたいに飛び跳ねるのはやめようか。


骨が刺さってる気がするんですけど……。


「泊まって行きなさい。この雨じゃ帰るのも大変でしょ。お家には連絡しといてあげるから」


「あ、家に連絡は良いです。誰も居ないし」


そう言うと、先輩以外全員が固まった。


「両親は殆ど家に居ないんです。だから、半分一人暮らしなんですよ、私」


心配掛けたくなくて、あははっと笑った。
でも、なかなか空気は和まない。


「母さん、空風呂入れてくる。奏、塾の宿題ヤバいんじゃねーの?」


先輩の一言で、空気が揺れる。
みんな先輩に言われるがまま、リビングから出て行った。


残ったのは、私と茜さん。


茜さんは、紅茶を一口飲むと、ほっと息を吐いた。
柔らかな笑顔を浮かべて、私を見つめる。


「ご両親の話、聞いても良いかしら?」


好奇心とは程遠いものを映した茜さんの眼。
まるで、何かを懐かしむようなそんな声色。


私は頷いて、全てを話した。