唯一の涙


「みんなご飯よ、そろそろ止めなさいな」


茜さんの言う通り、時計の針は7:30分を刻んでいる。
しまった、すっかり時間忘れてたよ。


こんなにゲームしたの小学生の時以来だし。


空くんが『はーーーい!!!』みんなの分の返事をして、ゲームを片付ける。
私もそれを手伝ってから、用意された料理の前に座った。


今日もあの時と同じ。
先輩のお父さんの姿はなかった。


茜さん達にとってはいつもの事なんだろう。
誰も気にする事もなく、料理に箸を伸ばしていた。


なんだろう。美味しいけど、美味しくないや。
味がしない。


「和歌ねーちゃん、美味しい?」


「……うん、美味しいよ」


ごめん、空くん。
私、よく分からないや。


「和歌ちゃん、いっぱい食べてね」


「はいっ、有り難うございます」


茜さんも……ごめんなさい。


私は誰にも悟られないように、完璧な笑顔を貼り付けて、料理を頬張った。
気を抜いたら、何かが溢れ出してきそうで、怖かったんだ。


結局私は、一度も先輩の顔を見ることができなかった。