「アイに逢ってから、へんな夢ばっか見るよ。」

午前2時30分
閉まった服屋の前で待ち合わせ。

いつの間にかそれがぼくと彼女の習慣になっていた。


「....アイ?」
「あぁ、ごめん、君が落としたプリクラに君の名前が書いてあったからさ、勝手に見ちゃった」
「・・・・・。」


逢って どうこうするわけでもなく ただ、話すだけ。

若い男女なのに、ね。

不思議とアイには性欲が沸かない。
魅力がないわけではなく、(むしろ今まで出逢った女性の中で一番魅力的なのだが)なんて言えばいいだろう、

儚くて 神秘的で 守ってやりたくなるような...そんな、感じ


「アイって呼ばないで」
「じゃあなんて呼べばいーのさ」
「・・・・・・・・。」
「ハニーって呼んじゃうよ?」


冗談半分で言ってみたらアイは コクンと頷いた。


―――――マジかよ。


いやいやいや今時ハニーはおかしいだろ。
アイはぼくのこと絶対『ダーリン』なんて呼ぶキャラじゃないし!...

いや、もし仮にダーリンと呼ばれたところで『ハニー』なんて言い返さないけどさ。



「なんかいい呼び名、考えてくるから」



ぼくは頭をかきながらアイに言うと またアイは小さく 頷いた。


「おっ、空、明るくなってきたな。そろそろ帰るか。」
「・・・・・・・。」
「・・・どした?寂しい?」





「・・・・・・・・・・泊めて。」





・・・・・・・・マジすか。

「いや、あの、アイさん?ぼくも一応、健康的なごくごく一般的な男の子なんでね?君が家に来ちゃったらぼく何するかわからないよ?」

高鳴る心臓を隠すように 冷静に喋るが、じわじわとかきだした汗が止まらない。


「わたしも性欲だらけのごくごく一般的な女の子よ?」


「・・・・・・・・・。」


これは もう 決まりだな。




さっき「性欲が沸かない」と言ったことを心から 訂正いたします。