ぼくは圭を家のなかに招き入れ、今までの出来事をそのまま伝えた。

アイと出逢ったこと。
そして現在音信不通なこと。
家族から電話があったこと。
女王蜂の出てくる変な夢。

とにかく全部だ。
話してどうこうなることでは決して無いのだが、ひとに話したかった。そして自分の中にある漠然とした不安から逃げたかったのだ。



「ピンクの髪の女か。そういえばうちの大学にいたなあ。あの1年生、目立つから結構有名だよ。」
「…へぇ、1年なんだ」
「…え?てゆーか、彼女なのに知らないのかよ」


・・・・・・彼女?
そういえばぼくらは 付き合っていたのだろうか?

ただ毎晩のように いつもの場所で待ち合わせては 他愛もない話をし、
週末になるとぼくのアパートでセックスをする。

確かに普通の関係ではないが、…《彼女》なのか?


「何にしてもとりあえずお前、家には帰ったほうがいいんじゃないか?身内になんかあったんだろう?」
「ん・・・でも・・・」


家族の反対を押しきってこの街に来たのだ。・・・今更、家に戻る資格なんてぼくには無い。


「なにを迷ってるか知らないけど、お前の母親が何故お前に連絡をしたのか、考えたほうがいいぞ」


―――…

ぼくに連絡してきた理由?


「お前を、頼ってるからだろ。…行ってやれよ。」

「・・・・・・・・圭。」

「ん?」

「・・・ありがとう」


ぼくは圭に 小さくお礼を言うと、圭は ぷっと吹き出した。


「気にすんなよ、親友だろーが。」




ぼくは次の日、荷物をまとめて田舎へと向かう電車に乗り込んだ。

不思議なことにそれ以降、女王蜂が夢に出てくることはなくなったのだった。