重い瞼を開けると、敦哉さんが仁王立ちで立っていた。
「あ、敦哉さん!?何で!?」
慌てて時間を確認すると、既に20時を回っている。
それじゃあ、昼過ぎからずっと眠っていたという事か。
急いで起き上がると、取り込んでいない洗濯物へ走る。
すると、敦哉さんが私の手を取り引き止めたのだった。
「走るなって。愛来、俺に言うべき事があるだろ?」
怖い顔で見つめる敦哉さんに、私は涙目だ。
「ごめんなさい。今度から、ちゃんと洗濯物も取り込むし、ご飯も作っておくから」
おずおず謝ると、深いため息をつかれてしまった。
「そうじゃなくて、もっと大事な事があるだろ?」
「大事な事?」
ふとダイニングテーブルを見て、検査薬が無くなっている事に気付き青ざめる。
何という不覚か。
あんな目立つ場所に、置いておかなければ良かった。
もしかして、敦哉さんは気付いているのかもしれない。
これでは、サプライズでも何でもないではないか。
肩を落とすも、全ては後の祭り。
覚悟を決め、妊娠の報告をしようとしたけれど、いざ本人を前にすると、緊張して言葉が出ない。
「あ•••、あ•••」
「あ?」
ひたすら『あ』しか言えず、これではただの挙動不審者だ。
昼間練習して、敦哉さんが微笑んでくれたシュミレーションまでしたというのに、まるで役に立たない。
恥ずかしさが先にきて、言葉が出ないのだ。
すると、敦哉さんは業を煮やした様に、突然キスをしてきたのだった。
「敦哉さん!?」
突然の行動にア然とする。
すると、敦哉さんは私を抱きしめてきた。
「話が無いなら、このままセックスしよう。俺、愛来を抱きたいな」
「えっ!?それはダメよ!」
慌てて体を突き放す。
すると、敦哉さんが口を尖らせた。
「何でダメなんだよ。ヤリたいんだって。いいだろ?」
強引に敦哉さんの手が服の下に伸びた時、咄嗟に口を突いて出ていたのだった。
「赤ちゃんがいるの!お腹に赤ちゃんがいるから、やめて」
その瞬間我に返り、思わず口を手で覆った。
すると、敦哉さんは満面の笑みを浮かべたのだった。
「愛来、ありがとう!」
そして、私を優しく抱きしめる。
まるで包み込む様に、抱きしめてくれたのだった。
「なかなか言ってくれないから、違うのかと思ったよ。でも、本当だったんだな。嬉しいよ、愛来」
「ううん。ありがとうは、私の方。こんな幸せを感じさせてくれるのは、敦哉さんだけだから」
見上げると、敦哉さんは優しく微笑んで、唇を重ねてきたのだった。

