「あ、いい眺め。下から見上げる愛来の胸ってのもいいな」

そう言われて、慌ててワンピースを上げようとした瞬間、敦哉さんにその手を止められた。

「何で着るんだよ。ヤリたかったんだろ?やろうぜ。海風に吹かれながらヤルのも燃えるから」

何を言っている、何を!
こんな状況で、よく平気で言えるものだ。
なおも睨みつける私に、敦哉さんも立ち上がると、おもむろにブラジャーのフックを外したのだった。

「ちょっと、何するのよ」

キャラ崩壊なら、敦哉さんも同じだ。
優しいオトナの男だと思っていたら、大間違いだったって事。
実は自分勝手で裏表があったのだ。
丸見え状態の胸を両手で隠すと、敦哉さんは不満そうに顔をしかめた。

「今さら隠すのか?もう遅いだろ。この間は、この胸にいっぱいキスさせてもらったんだけどな」

そう言うと、敦哉さんは私の手を離して胸に唇を当ててくる。
たまらず漏れる声を、次の瞬間には抑えた。

「やめてよ。私、遊びで体を許す様な女じゃない」

と、精一杯の強がりを言ってみる。
だってそれくらいしなければ、あまりに自分が不憫だからだ。
だけど、敦哉さんはやめるどころか、今度は手を伸ばしてきたのだった。

「遊びじゃないよ。だいたい、俺たちは恋人同士だろ?それに、愛来の事は嫌いじゃない。むしろ、好きな方に入るんだけどな」

「上から目線でムカつく•••」

好きな方に入るって、何よ。
私は好きなのに。
ずっと憧れていて、敦哉さんの事を想うだけで頑張れたのに。
そんな私の気持ちを利用するなんて、やっぱり許せない。
だけど、強引に押し倒された敦哉さんの体を突き放すことは出来なかった。
胸を揉まれながら、唇を重ねられる。
およそ理解し難い理由で、私の告白は受け入れられていたわけだけど、それでも急には想いを消し去ることは出来ない。
それに、この快感をはねのける理性も無かった。

「ネクタイ、外してくれるんじゃなかったのか?」

私を見下ろしながら、不敵ともいえる笑顔を浮かべている。
敦哉さんの本性を知って腹立たしいけれど、手はネクタイを外していた。

「ん•••。敦哉さん•••」

スーツを脱ぎ捨てた敦哉さんは、キスをした後、首筋から体へかけて唇を滑らせる。
充分過ぎるほど熱くなっている体が、敦哉さんへの想いを語っていた。

「なあ、愛来」

「な、何?」

喘ぐ私とは反対に、いたって冷静な敦哉さんに悔しさを感じる。
こっちは、返事をするのでさえ、いっぱいいっぱいだというのに。
それに、それだけではない。
敦哉さんはその続きを、ベッドをきしませながら言ったのだった。

「俺を振り向かせてみろよ。愛来にハマらせて」