私が音楽室に入ると先生は自分の音楽の中に入っていて私に気付かない。 これもいつものこと。 だから私はそっと音楽室の中にあるイスを持って先生の近くに座って先生の演奏を聴く。 時には先生を眺めながら、 時には目を瞑って先生の音楽の中に入りながら。 そして演奏が終わると先生は言う。 「いらっしゃい、星野。」 と。