今まで私が欲しいと願って、手に入らないモノなんて無かった。
裕福な家という訳では無かったけれど、私の欲求を満たす為に両親は頑張ってくれていたし
何より周りの人達は
《マリア様の欲しい物!?》
《もちろん私が手に入れて来ます…!》
少しでも私に近付きたいと群がる。
私はその人達にお願いするだけ。欲しいアクセサリー、服、お財布、美味しいケーキ
そして、
男の子だって、それは同じ。
目の前に居る顔の整った男性に、ニッコリと微笑んでみる。いつもと同じ。どうせ相手は私に見惚れて———
微笑み返すはず。
「なに、こっち見てんなよ。」
………はぁ?
予想外の言葉に、自然と引き攣る私の顔。まるで、さっきの彼のような、愛想笑いを浮かべることしかできない。
「えっと…あの…」
困ったようにそう言ってみれば、頭上からハッと鼻で笑ったような声が聞こえて
「マリア様も、イケメンには目が無いっすね。」
ムカつく一言を、私に投げかけた。
確かに私と彼は初対面のはずなのに、彼は私をマリア様と呼んだ。聞き慣れた呼び名に違和感を感じる。
てか、なんだこいつ喧嘩売ってんのか。
マリア様がイケメン好きで何が悪いの?
