「いいから、どいてよ…」

「ひろって呼べ」

「は、なんでよ」

「呼ばないならこの先進めてもいいわけ?」

一条は私の顔に手をあてた。


こんなやつに…と考えただけで寒気がする。許可なく私の顔に触れる神経もどうかしてる。一条様なら何しても許されるってか?

んなわけないでしょうが。

このマリア様に触れるなんて100万年早いわ。

「手をどけてくれたら」

「ん、どけた」

「…っ」


「え、なんて?聞こえない」


「ひろ!!!!!!」


言ってやった。
もう何回でも言ってやるわ。

「声でけー」

「言ったでしょ?どいて」

無理矢理押し退けて
あいつを置いて教室へと戻る。

あんな優しい瞳で見るな。
気が変になる。

あいつのせいで、授業も半分終わってしまったし、どうしてくれんのよ。


今回はあいつのペースに乗せられてしまった。不覚。あいつに敗北感を覚えるなんて私としたことが…







「マリア様、絶対俺のこと惚れるわ」


そう言って不敵な笑みを浮かべてた一条ひろを私はまだ知らない。