一条様だか二条様だか知らないけれど何でこいつが私の目の前に居るのよ。しかも、こうやってちゃっかり仕切ってるのよ。
「一条様とマリア様って…」
ざわざわとざわめき出す教室で、ひろ君はしれっとした表情で口を開いた。
「みんな、俺の事カッコイイと思う?」
は?
なに聞いてんの、こいつ。
そう思っていても、周りの女の子は必死に首を縦に振る。ハイエナみたいな瞳でひろ君を見る女の子に、唖然とする私。
「一条様はカッコイイです!」
1人の女の子が勇気を振り絞ってそう言えば、ひろ君はやけに納得したような表情で頷いた。
「…だよなぁ。」
そのナルシスト発言に心の底から鳥肌が立っている私とは対称的に、周りの女の子達は顔を赤らめる。
「もちろんです、一条様!一条様は非の打ち所がありませんもの。」
いやいや、非の打ち所がない?
むしろ非の打ち所しか無くない?
こんな性格悪い男になーにコロッと騙されてんの?こいつは自分に酔ってるナルシストで———
みんな、騙されているんだわ。顔だけで選ぶからこんなカスみたいな性格の男が近付いてくるのよ。
誰かに似てるひろ君の態度にイライラしてしまう私。一体誰に似て———
「あ、」
そうか、わかった。
彼に似てるのは———きっと、私。
悪魔のように性格が歪んでしまった私と、そっくりじゃない。
