「今マリア様、ひろ君って言わなかった?」
「言った言った!え、なに?そういう関係なの?」
「あのマリア様が?嘘でしょ?」
クラスメートが、次々と騒ぎ出す。
「あっ、えっと…」
まずい。
今まで男を全員下僕扱いしてきた私の口から、『ひろ君』という甘いワードが登場するなんて…
誰が想像できただろうか。
それに、私はこの学校の聖母、マリア様。
噂が広がるのも、時間の問題だわ…。
騒がしいこの状況をどうすればいいかわからず、ぎゅっと唇を噛み締める。
っと、そのとき…
「はーい、みんなちゅうもーく!」
さっきまで私の席に座っていたひろ君が、立ち上がり、突然そんな大声をあげた。
みんなの視線が、一斉に私から彼に向けられる。
「えっ、ちょ…。あれって、一条様じゃない?」
「うそ!マリア様のお相手って、一条様だったの!?」
「えー…私、彼のこと狙ってたのに~」
ちらほらと、そんな女子の話し声が耳に届いた。
一条様…?
えっ、なに。
こいつ、そんなに有名なの?
