「美広、どうしたの?じゃないよ。
何度も何度も呼んだのに。」
必死になっていた私には
彼女の声が届かず、
彼女を拗ねさせてしまったようだった。
「香林ごめん。私、少し集中してて。」
慌てて弁解しようとするのだが、
彼女にはお見通しのようで、
怒った顔を崩すことなく
静かに説教を始めた。
「美広、もう1年後には受験なんだよ?
ったく、授業に集中してたわけではないでしょう」
彼女は成績があまり芳しくない私のことを
誰よりも心配している。
だからなのか、それはそれは口酸っぱく
同じ小言を繰り返すのだ。

