伊織?聞いてくれる?




あたしね、これでもし……




「…これで裕也が来なかったら諦めようと思うの。
もう5年も待ったんだし、十分かなって……」




地面を見て、積もる雪を見つめる。




雪は大学を出る前より小降りになってるけど、さっきの雪でかなり積もってる。




伊織は黙ってあたしを見つめて聞いてくれてる。




そう、言いたいことはもう一つあるの。




まるであたしの言いたいことが分かってるみたい。




「…それでね?裕也来ないと思うから、伊織に話があるの。あの…」




もう言ってしまおうと思った。




伊織のことが好きって。




だってどうせ裕也は来ないから……




でもそれは伊織があたしの口に人差し指を当てたことで途絶えた。