「…往生際が、悪いよな」

ぽつりと零した声。
はっとして顔を上げる。
見たことのないくらい辛そうな顔。

あたしが、
あたしが拓をこんな顔にさせたんだ。
ぎゅっと胸を掴まれたような感覚に襲われる。

「好きに…なるわけなんてないでしょ」

これ以上、そんな辛そうな顔
見れないよ。
ごめんね。

でも…きっとそれは本心じゃない。
わかってるの。
惹かれてるって。
あたし、佐野有の事もっと知りたいって
一瞬でも思ってしまった。