『なにかあったんだ?』
オサムは胸騒ぎを感じた。

石をライトにかざしてみると黒ずんで見える。
輝いていれば暗がりでも鮮やかに見えるのに。

『急がなければ』
オサムは大至急峠を下り古知平に向かった。

大蛙が何匹も飛び掛ってくる。何か行く手を
さえぎってでもいるかのようだ。

やっと古知平に着いた。
『キーツはどこだ?キーツ?』
平原の中央に人が倒れているのがすぐに分かった。

キーツが頭から血を流して倒れている。
キーツはすぐに気がついた。

後頭部をいきなり殴られたものの
幸いに傷は浅い。どうもツキノワグマらしい。
二人は車に欠け乗り大原へと急いだ。

昼間は土産品店や観光客で人通りも多いが、
三千院の山門はこの門前町を上り詰めた

頂上付近にあって、山門前には土産屋が
一軒あるだけで意外と閑散としている。

周りは浅い崖になっていてもみじの大木の間を
竹の柵がしてあるだけだ。

夜は真っ暗で何も見えない、ちょっと危険だ。
懐中電灯がなければまったく一歩も進めない
ほど真っ暗なのだ。

やはりケムンはいない。車のライトを
つけっぱなしにして回りを探すと思ったとおり
ケムンは崖下に落ちてうめいていた。

竹の柵がそこだけ切れていてこちら側から照らすと
暗闇に道があるように見える。これは危険だ。

ケムンは何の疑いもなくその道に足を踏み込み
あるはずの道がなくて落下したのだ。

右手にはしっかりとライトを握ってはいたが
灯は消えていた。幸いかすり傷だけで元気だ。
3人は車に駆け乗り鞍馬へ急行した。