昼食は加茂川の傍で牛丼を食べた。
皆こういうものがとても珍しいらしく興味津々だが、
今はナムストーン浮遊実験のほうがそれに勝っていた。

五人は牛丼を食べ終わると。ゆっくりと三条通から
大橋の西詰めにでてそこから加茂川に下りた。

川土手は広いスペースになっていて子供たちが遊んでいる。
川面への傾斜は石組みだ。アベックが等間隔に仲良く座って
いて京都加茂川の名物にもなっている。

京都中央ホテルは御池通りにある。そこから三条四条五条くらいまでが
料亭の川床があるところで8月16日の夜にはこの川床のお客も
川土手のカップルも皆幻想的な大文字の送り火に天を仰ぐのだ。

上流へ向かう。丸太町通りをくぐり今出川を抜けると高野川との
合流地点が目の前だ。この近辺には雑草が生い茂っていて
人影はまったくない。ここなら十分やれそうだ。

五人は適当な草むらを見つけて円陣を作った。『リラックス』みんな目
で確認しながら手首を組みナムストーンを唱えるとすっとみんなの身体が浮いた。

スカイダイビングの五人組バージョンを地上から逆に上空へ向かっている格好だ。
1,2メートル上昇してすぐに着地した。皆の顔に緊張が走る。
「今度は北に1メートル移動して着地してみよう」

オサムがそういうとみんなはうなづいた。
「OK!」
みんなの意思が合致すれば難なく数メートルは移動できそうだ。

何度か繰り返す。
(ケムン)「橋にいた人に見られているような気がしたけど?」
(キーツ)「いや、見えていないと思うよ」
(ナセル)「はっきりしていることは、我々は空を飛んでいるということだ」

(レイ)「そうよ。楽しそうだから思いっきり遊泳してみましょうよ」
(オサム)「みんなの心が一致しないと危険だからあらかじめ予定を立てよう」
みんな大きくうなづいた。

(オサム)「真上10メートルくらいまで浮上して1回転しゆっくりと着地してみよう」
みんなでオッケーと答えて再び手を組み浮上、ゆっくりと一回転して静かに降下した。

(オサム)「これが基本だと思うからもっとリラックスしてもう一度。
10秒間空中で停止してから大きく一回転してゆっくりと着地。OK?」

再び浮上する。周りの景色を眺めながらさらにもう一度。
だいぶみんな離れてきた。だって楽しいんだもん。今は何故浮上するのか
などは考えないことにして浮遊に集中した。