キーツが今回帰国したらすぐにロンドンに行って
その石を確認してくるといった。今確認できているのは

五つのナムストーンと四つの光る石。五人は昼食を食べながら
頭の中は謎だらけでめまぐるしく思いをめぐらせていた。

昼食を終えてレイの研究発表に入った。レイは古代の宗教、
アニミズムやシャーマニズムの発生の初期からすでに黒石
玉石水晶などの石は世界の各地で占いや予言や魔よけや

呪術のために用いられてきた。自身守護のためには勾玉や
宝石輝石を数珠状につなぐネックレス。十字架もどきの
魔よけペンダント。こぶしに魔力をこめるためのブレスレット。

金銀の貴金属とともに古来から現代に至るまで数多くの
パワーストーン信仰があるものと思われる。効力の差こそあれ
自己暗示が加味されて間違いなくいくらかの力は与えられるようだ。

レイはその中でも水晶の大玉占術に注目した。よく磨かれた
水晶の玉は顔を近づけると第一表面と中央層、反対側の裏面と
三つの写面層が現れる。第一表面は丸く大きくまのびして鼻と顔の

中央部分だけが大きく映る。裏面は逆に顔もろとも小さく回りの
景色まで写してしまう。この両面とに乱反射も加わって間接照明
の光の具合でスペクトルが現れる。

屈折率が微妙に違うのですべてがミックスされて謎の顔が中央に浮かぶ。
それは自分の顔ではあるのだが自分の心のままにうれしい時はうれしそうに
悲しい時は悲しいように映りまたそう見える。

ここにひとつの活性要素、つまり自分がこうあってほしいと言う思いを
強く加えると、そのようにすべてが見えてしまうのだ。

白雪姫の悪い女王のように鏡よ鏡と呼べば鏡は女王の好む答えしか応えない。
まさに水晶の玉は占う術者の意向のままに反応するのだ。

大確信に基づいた音声は人を金縛りにする。確信の波動が言霊(ことだま)として
民衆に伝わり民衆は勇気を得て集団(催眠)行動にでる。

戦にしろ巨大獣との死闘にしろ天災にしろ、人々は太古の昔から
大災難に遭遇すると知恵を絞り一致団結して勝利してきた。
その要がシャーマンだったのだ。