カイ君はちょっと不器用な男の子です。
学校でもまだ友達がいません。
言葉数も少ないです。そのせいか怖いと思われてるようでした。

こんなカイ君の楽しみは学校帰りに、土手に寝転がって、空を見たり人間ウォッチングすることでした。

そういえば、今日は学校でこんなことがありました。

カイ君が歩いていると、向こうから女の子が2人で腕を組んで歩いてきます。

すると一人の女の子の足元に虫がいました。女の子達はおしゃべりに夢中で気づいていません。

カイ君は、足早に女の子のそばにいくと、虫を踏まないように軽く女の子の肩を押しました。

カイ君は軽く押したつもりだったけれど、女の子達は不意を突かれたので、思わず後ろに尻餅をつくかたちで、座り込んでしまいました。

「いたぁ」

カイ君もビックリして、

『ごめんっ』

と捨て台詞のように走り去ってしまいました。

「何。今の?ひどくない?」

一人の女の子が言いました。

けれど、もう一人の女の子が気付いたのです。

その子の足元に虫がいたのを・・・・・。
「もしかして・・・・・・・・?」

女の子は振り返り、走り去るカイ君の後ろ姿を見つめました。

そんなカイ君は、今日もいつものように土手に寝転がっていると、ふと緑絨毯の中に黄色いたんぽぽが沢山咲いていることに気付きました。体を 反転させて反対側も見てみると、少し離れた石の影に隠れて、ポツンとたんぽぽが一輪咲いてました。

『何か僕みたい・・・。』

カイ君は、そう話しかけながら、石を掘り起こしました。

『これで仲間が見えるでしょ♪』

カイ君はそう言うと手についた土を叩きながら家路に着きました。

それからカイ君は帰りにその一輪のたんぽぽをきにかけるようになりました。『元気に咲いてるかな?』
『今日こんなことがあったよ。』

カイ君が石を取り除いたお陰で、日が燦々と当たるようになり、たんぽぽは日に日に元気になり、カイ君が来るのを待ち望んでいるかのようです。

今日はまた学校でこんなことがありました。

放課後、先生との用事を済ませ職員室からカイ君がクラスに戻ると、クラスのいわゆるガキ大将が気が弱そうな男の子をいじめていました。

男の子が何も言い返せずにいたので、カイ君は足早にその子の近くに行くと
『 ちょっと悪いけど、先生が呼んでるから。』

そう言ってズカズカとその子の手を引いて教室をあとにしました。
手を引いたまま暫く行くと、手を離しながら

『ごめん、先生がってのは嘘なんだけど、何か辛そうだったから。』

「ありがとう」気弱そうな子が答えました。

『校門まで一緒に帰る?』カイ君がそう言うとその子は頷き、校門で別れました。