肘と手首の間くらい。


動物に噛まれたような傷だった。
 


「腕、どうされたんですか、そこ?」
 
「ああ、これ? どうしたと思う?」


 
空手をやっているとは思えないほど長くて綺麗な指で傷跡に触れながら逆に聞き返された。


 
「うーん……ワニに噛まれた、とか?」
 


ウケ狙いで答えたら、彼はフクザツな顔をした後、フッと笑みをうかべてケラケラ笑った。



この人がこんなに楽しそうに笑うなんて、意外。
 

「やっぱり、覚えてないのか。まあ、無理ないか。小さかったからな」
 
「えっ、もしかして、昔お会いしたことあるんですか?」
 
「さあ、どうだろうね」