もちろん曲は身体に染みついていて、ふと気がつくと口ずさんでるっていうほど馴染みの曲。
 

「少しは、気がまぎれるかもしれないと思ってな。

他に、何か入り用な物があったら原島に言えばいい」
 


相変わらず十五度ほど上を向いて偉そうに見える物腰だったけれど、嫌じゃなかった。


 
「嬉しい。どうもありがとうございます」


 
「いや、別に」

 
彼が長めの前髪をかきあげた時、氷室涼輔の右腕に白い傷跡があるのに気づいた。