「なぜ泣く?」
 


氷室涼輔の無表情な声が耳に響く。
 


「な、泣いてなんか……」
 


顔を背けた。
 


「泣いているじゃないか」
 
「泣いてません」
 


頬を涙が流れた。
 


「泣いている」
 
「泣いてません!」


 
あたしの意思と言葉に反して、ドバーッ! とばかりに涙が出た。

もう、洪水状態。
 

「あたし、泣かなかった……母のお葬式の時も、お通夜だって……。

い……今更、……泣くわけ……ウワーン!!! エグッエグッ……」
 
そこから先は何も言えなくなった。うつむいて、両手で顔をおおって、大泣き。