パパとママのことを引き合いに出されて、あたしはちょっとブルーになった。


そう言えば、あたしにはもうパパもママもいないんだっけ……みたいな感じに。
 


「君もわかっただろう。

この社会は、身寄りのない若い女性が一人で生きて行くには厳しすぎるということが」
 


探偵さんと同じことを氷室涼輔は言った。


 
『パンツ売りさばこうって女が、今更気取ったこと言ってんじゃねぇよ』


 
忘れかけていた「コージ」の言葉が耳に甦った。

ヤツがつかんだ手首が、妙に汚い気がした。
 


――ああ、あたし、本当に一人になっちゃったんだ……。
 


フヌケになって、正気に戻って二十四時間足らず。


今まで口では色々言いながらも、天涯孤独であることを本当には実感していなかった。

だけど、彼から言われて初めてそれがドラマや小説の中の話ではなくて、現実にあたしの身に起こっていることなんだ、と改めて思い知った。