コクコクとあたしは頷いた。
 


おおっ、これはあたしにとって良い方に話が向いているではないか。
 


「遠慮ないな」


 
氷室涼輔は苦笑した。

 
「君の気持ちはわかった。

薬剤師になりたいらしいな。大学には引き続き行けばいい。

ただし、父君の御遺志でもあるから、うちで君をお預かりしないといけないことは変わりない。

悪い話ではないはずだ。

今は暇でも専門過程に入れば、勉強も大変になるだろう。

一人暮しじゃ何かと大変だろうからな」
 


「で、でも……そこまでお世話になるわけには……。ほら、お金もかかるし……」


 
「書生だと思えばいい。

ご両親が残した会社が、しっかりと利益を生んでくれているから、君は何も遠慮することない」
 

『書生』とは、またレトロな言いまわし。
 

「安心しろ、将来好きな男ができたら、そいつのところに行けばいい。

うちから嫁に出してやるし、必要なら会社も返そう」

と氷室涼輔。