ROMANTICA~ロマンチカ~

だけどはっきりしているのは、なつかしのわが家は、今となってはどんなになつかしくとも、「わが家」ではなくなってしまったらしいっていうこと。


苦しまぎれに、さっき思わず大学で一番仲良しのレンちゃんに電話をかけたところ、
 

「しばらくうちの下宿におったら?」

 
その言葉には、涙が出たものだった。

ああ、持つべきものは友達……。
 

ちなみに、レンちゃんは京都の土地持ちのお嬢様で、彼女の下宿は広尾にあるオートロック付きセキュリティ・システム完備の3LDK、家賃月八十万円也。

 
だけど、親しき仲にも礼儀あり。


いつまでもレンちゃんのところでお世話になるわけにもいかないだろう。


あたしがいると、彼氏も呼べないだろうし。
 

あたしには、彼氏がいない。


今までにも、いたことがない。

寝る場所欲しさに今から慌てて作る気もない。