ROMANTICA~ロマンチカ~

「ひ、ひどい! そんなこと聞いてない!」
 

思わずヒステリーを起こすあたし。

「婚約者」(以下“冷血漢”)は、紅茶のカップを、そりゃあもう優雅な仕草でソーサーに置き、涼しい顔で言ってのけた。
 

「私が自分の経営する会社に関する決定を下すのに、なぜ一々おまえの許可を取らなくてはならない」

 
どうやら、会社そのものが乗っ取られたみたいな形になっているらしかった。

 
「ふざけんじゃないわよ!
この冷血男!
あんたなんて、血が凍ってるのよ、このロクデナシ! 大っ嫌い! 

大体、さっきから黙って聞いてれば何よ? 『おまえ、おまえ』って、偉そうに! 

あたしの名前は千住都季、おまえこそ、そんなに偉いのかーッ!!!」

 
思わずタンカを切ってあたしはお屋敷を飛び出した。

玄関を飛び出し、広い庭を駆け抜け、ゼイゼイ言いながら数百メートル先の門まで辿り着いた。

高さ三メートルの門をどうやって乗り越えるか思案している最中に、やって来た執事さんやらメイドさんやら庭師さんにあっさり捕まり、そのままお屋敷に連れ戻された。
 

我ながら、行動力はあるけれど、計画性がない。