「涼輔さん……」
 

最後に、彼の声が聞けるなんて、あたしは幸せだ。

取引が何だか良くわからないけれど。
 
『都季、心配するな。すぐに私がそっちに行ってやる』
 

「え? 涼輔さん、どういうこと?」
 

『人質交換を持ちかけたら、快く乗ってきた』
 

「だっ、ダメですよ。涼輔さんがそんなことしたら……。大事な身体なんだから。

何千人っていう社員がいるんだから。

ケガでもしたら大変。おじ様も原島さんもみんな……」
 

『都季』
 
彼を、氷室涼輔を巻きこむわけにはいかない。