トゥルルル……。
 

電話が鳴った。
 
「シュウちゃん、電話」
 
声をかけてから、電話番が今日はいないことに気づく。
 
「はい、ヤナギヤ探偵事務所」
 
営業用の声色を使う。

年の瀬も迫っていることだ。ボーナスをここらで稼いでおくのも悪くない。

 
「おや、氷室さん? 
御本人? 

まさか、あなたが自ら電話をかけてくれるとは思わなかったな。

えッ?! 
ちょっと、あなた、それは無茶ですよ、御自分の立場をわきまえないと……。
だから、そういうことは警察の仕事……」
 

言いかけて、言葉を飲みこむ。

警察の悪口を先日、散々言った自分が、今更警察を擁護してやる必要もない。