『エサは撒いた。人も雇った。決行は十二月二四日、クリスマス・イヴ』
 
電話口から旗丸理恵子の声が言った。
 
――もう、後戻りはできない……。
 
受話器を握る俊夫の手が震えていたのは、必ずしも初冬の札幌の夜の寒さだけによるものではなかった。