ROMANTICA~ロマンチカ~

どうやら普段、よっぽど面白いことがないらしい。

だけど、否定してくれないところが、ちょっと悲しい。

彼らしいけれど。


 
「そんなに面白いですか?」
 
「面白いね」
 
「普段もそうやって笑えばいいのに」
 
「そう簡単に素顔を見せるわけにはいかないね」と氷室涼輔。

 
「ビジネスっていうのも、嫌な世界だ。

まぁ、どこの世界でもそうなんだろうが、どこの誰それと仲良くなるとステイタス。

直接便宜を計ってもらえなくても、そいつと仲がいいってことで、別の相手が見返りを求めてすり寄って来る。

その連続だ」
 

あたしの髪から手を離すと、彼は無表情に言った。


氷室涼輔が自分のことを話してくれたのは、初めてだった。

思えばいつも、彼は聞き役に徹してくれていた。
 

この時……
嫌悪感も、楽しんでいる様子も彼の言葉にはなかった。

ただ、事実をありのままに言っているだけ、そんな感じだった。