ROMANTICA~ロマンチカ~

氷室涼輔は目を細め、アゴに手を当てると、



「ああ、なるほど。周りがゴチャゴチャ言っていたのが気になったか? 

ラジオの雑音か何かだと思うといい」


 
雑音、ねぇ……。

彼って、やっぱり大物だ。

人格の根底にあるものが、すごくどっしりとしているというか。
 

曲はモーツァルトの『メヌエット』に変わった。


 
「都季、本当は未練があるんだろう?」


 
――はい、おっしゃる通りでございます。

あなた様との婚約話を、自分からホゴにした大バカ者とは、このわたくしめにございますでそうろう。
 



「えっ、何のことですかぁ?」


 
口と頭が上手く連動していない。

 
ああ、バカだ。
 

氷室涼輔は肩をすくめた。
 

あたしの顔をじっと見る。
 

あたしは彼から視線を反らす。