ROMANTICA~ロマンチカ~

「へブシッ!」
 

思い出に浸っていると、またクシャミが出た。

寒い。悲しい。

泣いちゃおうかな。


 
「都季?」


 
あたしを呼ぶ声。氷室涼輔だった。



カクテル・グラスを片手に、ブラック・フォーマルが決まっている。


くやしいけど……本当に素敵だ。 
 


「こんなところにいたのか」


 
あたしを探しに来てくれたのかな? 

ちょっと嬉しい。涙が引っ込んだ。あたしは単細胞だ。
 


「どうした?」
 

「ちょっと、暑いので、風に当たろうかなと……」
 

「ふーん……」
 


彼の目の奥に、面白がるような光が宿る。
 

「何ですか?」
 

「それにしては、寒そうにしてるなと思って」
 

「そ、そんなこと……」



氷室涼輔はタキシードの上着を脱ぐと、後じさりしようとするあたしの肩に、それをかけてくれた。