ROMANTICA~ロマンチカ~

……両親……。


彼女には、パパがいるんだ……。



頭の中は真っ白だったけど、そのことが一番鮮烈な感想だった。
 


高梨君は高校のクラスメイトで、一年生の時から仲良しだった。

同じ予備校に通っていて、予備校帰りに駅まで良く一緒に歩いた。

高梨君は成績優秀でスポーツ万能。

おまけにおうちは開業医。

女の子にモテた。

だけど、ちょっとクールで、騒ぐ女の子たちのことなんか、全然相手にしなくって。

そこがいいっていうんでますますモテた。


あたしが彼と仲良くなれたのは、たまたま同じ予備校に行っていて、そこの予備校に通っていたのは、同じ学校からはあたしたちだけだったから、だと思う。


 
高梨君は医学部を目指していて、あたしは薬学部志望。


将来、高梨君がお医者さんになって、あたしが高梨君の家の病院で薬剤師をする。そんな夢を見ていた。
 


他愛無い夢、バカみたいな高三の夏。
 

あまりにも儚(はかな)く、粉々に壊れた夢のカケラ。
 
高梨君だったら、性病を持っていなさそうだとあたしは思ったから……。公園からラブ・ホテルに……というシナリオも想定して、二千七百円の勝負パンツをはいて行ったあたしは、あの時ほど自分が惨めで阿呆に感じられたことはない。