テントについてみると案外お手洗いからは近かった。


「お。お帰り、心向」


ユウカちゃんがタオルをエナメルのバッグから取り出しながら私に言った。


「ただいま。遅くなっちゃってごめんね」

「うぅん。それより、なんで先輩と一緒に?」


ユウカちゃんは少し先輩に視線を送りながら声を潜めて私に聞いた。


「テントの場所が分からなくて、それでここまで案内してもらったの。でも名前も覚えてないなんて私、相手にすごく失礼だよね」

「覚えてないの?あれじゃん、あの入学式のとき歓迎の挨拶してた高良陽汰先輩、じゃなかった?」


・・・"高良陽汰"。

心の中でぽつりと呟いた。

なぜかさっき見た笑顔が頭から消えなくて、思い出すたび顔が熱くなるような気がした。

本当に、なにこれ。