*ふわり、はつこい*

頭を枕にボスンと伏せた。

携帯のことは気にしないように、とベッドから一番遠い位置にある机に置いた。

もういっそ寝てしまおうかな。

そうも考えたけど結局、寝れるはずもなかった。


「心向ー、ご飯出来たからちゃっちゃと食べなさい」


下の階からお母さんが私を呼ぶ声にはっとした。

私はとりあえずご飯を食べに1階へ降りた。

1階からは晩ご飯のいい匂いがした。


「あら心向、どうしたのその顔。ものすごく陰気そうな表情してるわよ。そんなに先輩たちが卒業するのいやなの?」


お母さんは冗談交じりにそう言った。


「うん、そりゃね。・・・いただきます」


私は用意されていた晩ご飯のカレーを頬張った。


「・・・ヒナは?」

「お姉ちゃん今日は友達とお食事会ですってよ」

「ふぅん」


私は今の気持ちを出来るだけ顔に出ないようにした。

だけどお母さんには分かってしまうらしい。


「もう、何さっきからソワソワしてるの?ご飯零さないでよ。その陰気臭い顔もやめなさい。福が逃げてっちゃうわよ」


お母さんは呆れたように溜息を漏らしながら、自分が食べ終わった分の食器を台所に持って行った。