*ふわり、はつこい*

「ありがとう」


至の口から出たその言葉に私の胸が高鳴った。

心のどこかでいい返事を期待していたのだ。

だけどすぐにその気持ちはどん底に突き落とされた。


「でもごめん。受け取れない」


至のその言葉が何度も頭で繰り返し響く。

だけどあたしは理解出来なかった。

・・・うぅん。

理解するのをあたし自身が拒んでいたんだ。


「え・・・?」

「そういうの俺、半端な気持ちで受け取りたくないんだ。だから、本当にごめん。でも気持ちはすげぇ嬉しい」


頭を鈍器で殴られた様な感覚に陥った。

体が急にずしりと重くなったような気がする。


「そっか。・・・ご、ごめんね。なんか迷惑なことしちゃったね。用ってこれだけだからもう部活戻っていいよっ」


至の顔が真っ直ぐ見れなくてあたしは俯いたままそう言った。

俯いているせいで涙が零れ落ちそうになったけど、至の前で泣くのは卑怯だと思った。

だから必死に涙を堪えた。