「やっぱりマフラー持ってくればよかったぁ」


私は鼻を真っ赤にしながら手に息を吐いた。


「めっちゃ寒そうじゃん。カーディガンだけ?」


速水くんは学ランの下にカーディガンを着ているしマフラーも巻いている。

私にはすごく羨ましく思えた。


「うん。ちょっと朝慌ててマフラー忘れちゃった」

「ばかだなぁ。ほら」


速水くんはそう言って私の首に自分の巻いていたマフラーを私の首に巻いてくれた。


「え、いいの!?速水くん寒いでしょ!?大丈夫だよ、私は」

「いいんだよ。俺さっき信号のところで走ったからそこまで寒くねーし」


だけど速水くんの鼻も真っ赤だった。

きっとこれは速水くんの優しい嘘なんだ。

でも私はその優しい嘘に気付かないふりをすることにした。


「ありがとう」

「おう」


そして速水くんは私のおでこに拳をこつんとぶつけた。